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継続診療のピットフォール

 継続的に患者を診ることが大切で効果的なことは自明のことのようにおもわれがちですが、長く診ることで生じる認知上様々バイアスがあるものです。

たとえば・・・
1.徐々に進行する異常に気づかない
 たとえばパーキンソン病は徐々に進行するため、単に退行性変化であろうと思い込んでいることがあります。他の医師から「あの患者さんの前傾姿勢とかちょっと気になりますね」ということではっ!と気づくことがあります。とにかくゆっくりとした進行をする疾患には足をすくわれやすいのです。


2.継続的に診ていることで、データや所見を良い方に解釈してしまう

 かかりつけの患者が腹痛を訴えた場合、それまでずっと対処してきた便秘のせいだと解釈し、その後大腸がんが判明したり、軽度の肝障害がはじめて指摘されて、根拠なく様子をみようと考えて、その後胆道系の悪性腫瘍が見つかったりすることは、ベテラン医師ならば苦い経験として記憶しているものです。長く診ている患者であるがゆえに「悪いことがおきてほしくない」という思いがあり、それによって診断や処方のバイアスが生じることがあります。やはり長く診ていると、よく知っている関係になりますので、よく知っている人には、あまり悪い方向での推論はやりにくいですよね。


 ということで、長く診ている医者は担当患者のすべてを正確に把握し正しい判断をしているとは限らないということを若手医師は知っておく必要があります。つまり、ベテラン医師にが診ていた患者が入院し、あなたがその担当医となった場合、そのベテラン医師がとても尊敬されている素晴らしい医師だったとしても、それまでの診断や処方をすべていったん疑ってみるのは大切なことです。

 継続的にみるっていうのはいくつかの次元(例えばInterpersonal Continuity等)がありますが、ある患者さんをひとりの医者がずっと診つづけるということについて、そのベネフィットが確実にあるという研究結果はまだ明確にはありません。よく医師会あたりが発信する「継続的にみることは素晴らしい」っていう言説はかならずしも根拠があるわけではないのです。

 ただ、長く地域でやっているものとしては、なんらかのよいOutcomeにむすびついているという「感覚」はあります。しかし、これは実証研究で否定される神話にすぎないかも知れません。 

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