日本の総合診療医の6つのコアコンピテンシー

 ついにというか、やっとのことで4月20日に 日本専門医機構「総合診療専門医に関する委員会」からの報告として、総合診療専門医の6つのコアコンピテンシーが発表されました。今後はこのブログでも様々な側面から取り上げていこうと思いますが、結果的には家庭医療やGeneral Practiceの世界的潮流にほぼ一致するコンピテンシーセッティングとなっていると考えます。これからの議論が常にたちもどる地点として重要ですし、そうした地点がこの数十年なかったことを考えると感慨深いものがあります。

 ただし、日本の総合診療医としてもとめられているのは、おそらく英国をはじめとするヨーロッパ諸国のプライマリ・ケア専門医=家庭医(学的基盤はFamily Medicine)と、内科的診療を中心として、病院の一般病棟や救急診療を担う北米型ホスピタリスト=病院総合医(学的基盤はHospital Medicine)のハイブリッドと個人的には考えております。圧倒的な供給不足が故に「今」すぐ必要な総合診療医のタイプとしては、むしろ病院総合医でしょう。ただし、今後の高齢社会の急速進行や特に都市部のプライマリ・ケア機能の脆弱化が予測される中では、プライマリ・ケア専門医、すなわち家庭医が必要になってくることはまちがいありません。また、家庭医と病院総合医の連携が、これからの20年くらいの日本のヘルスケア・システムにとってキーの一つであるだろうこともおさえておく必要があります。

 したがって、今回の総合診療医のコアコンピテンシーはかなり家庭医寄りになっていますが、ここにない病院総合医に独自のコンピテンシーをむしろ提示、付加していくことが今後の作業課題であると考えればいいと思います。

 このコンピテンシーに対応するだろう英語のキーワードを、個人的な視点からですが、列挙してみます。文献など調べる上で参考になろうかと思います。

 

総合診療専門医の6つのコアコンピテンシー

1.人間中心の医療・ケア Person-centered care
1)患者中心の医療 Patient centered care
2)家族志向型医療・ケア Family oriented care
3)患者・家族との協働を促すコミュニケーション Interpersonal communication skills
2.包括的統合アプローチ Comprehensive care, Integrated care
1)未分化で多様かつ複雑な健康問題への対応 First contact care, care for multimorbidity, complex intervention, complexity
2)効率よく的確な臨床推論 clinical reasoning, value based practice
3)健康増進と疾病予防  health promotion, preventive care
4)継続的な医療・ケア continuity of care
3.連携重視のマネジメント Interprofessional work
1)多職種協働のチーム医療 team-based care, interprofessionality

2)医療機関連携および医療・介護連携 transprofessional care
3)組織運営マネジメント management, leadership
4.地域志向アプローチ Community orientation
1)保健・医療・介護・福祉事業への参画 Community participation, public health, long term care

2)地域ニーズの把握とアプローチ Community diagnosis and treatment
5.公益に資する職業規範 Professionalism
1)倫理観と説明責任 moral judgement, accountability
2)自己研鑽とワークライフバランス continuing professional development, self-management
3)研究と教育 Research and Education&Teaching

6.診療の場の多様性 System based practice
1)外来医療 Ambulatory care
2)救急医療 Emergency care
3)病棟医療 Inpatient care
4)在宅医療 Home visiting care

 

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ハナミズキ