読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

日本のプライマリ・ケア現場におけるPopulation Health Managementを構想する

 Population health management(PHM)とは、ある保険集団内の健康アウトカムの構成、その構成に影響を与える健康決定要因、さらにその決定要因にインパクトをもたらす政策と介入のことである(Nash)とされる。

 日立総研の中村桃子氏による解説を要約すると、
1.集団をターゲットにデータの収集・分析を行うことにより、現在は健康でも慢性疾患に対してリスクがある対象者や既に罹患しているものの自覚していない対象者にも医療介入を行うことが可能となる
2.現在は健康であっても慢性疾患に対するリスクを抱えているのであれば、予防のための健康増進などを行うため、従来の医療と比較してより広範な対象者のリスクを排除することができる
3.対象となる疾患は、リスクの想定が可能な慢性疾患となる
4.PHMを通じて蓄積された情報を基に、どのような対象者にどのようなケアを提供することが効果的であったかを分析し、提供するケアプランを改良していくことが可能

 ということになっているが、基本的には医療費の増大を抑制することをメインに、同時に患者集団の健康状態の維持を並立させるこころみといえるだろう。

 さて、ここでは以前にブログエントリーで言及したことがあるプライマリ・ケア現場におけるパネルマネージメントとの関連に注目したい。

 パネルマネージメントとは、プライマリ・ケア現場(診療所でも病院外来でもよい)のパネル=利用しているかかりつけの患者集団に対して、系統的に上記にのべたようなPopulation Health Managementを実施することである。
 その目的は
1.本来受けるべきケアをうけていない(Care Gaps)患者を同定しアプローチすること
2.これまではあまり関心を向けられなかったかかりつけ患者(安定した単一の慢性疾患患者や健診のみで受診するような患者)にアプローチし、継続ケアを提供すること
 とされ、どちらかというと責任をもつ人口集団の健康状態をいかに向上させるかという点に重きが置かれている。

 オレゴン健康科学大学のDr. Yamashitaのプレゼンテーションにインスパイアされて、プライマリ・ケアを提供している診療所や病院外来におけるパネルマネージメントについて以下の図を自作してみた。

f:id:fujinumayasuki:20150428161833j:plain

 

 診療所や病院の一般外来などに通院している、あるいは何かあった場合に利用している患者群を仮に健康リスクによってレイヤー化してみた。体感的には納得できるのではないだろうか。

 おそらく、現場のプライマリ・ケア医療者は高リスク群で消耗しており、中等度~低リスク郡にはあまり関心がないか、流しているというのが現状だろう。この部分のケアの質を向上させるためには専門職連携あるいは、看護師等の医者以外の専門職に権限を移譲してマネージメントすることが非常に有効だと思われる。

 ただし、医療費に関して言うと、下の図のよう高リスク群に関して医療費が多く投下されているのは世界共通であるが、ここは専門職連携によるケアマネージメントが必要なところである。この高リスク群の中には、ERや入院のHigh utilizerが多いとされるのも先進国で共通の問題といえる。

f:id:fujinumayasuki:20150428162134j:plain

 

 

 ここで、米国ソロプラクティスの家庭医Jeffrey Brennerの取り組みに注目したい。彼のいうところのCollaborative Super-utilizer modelを紹介する。
 米国の最貧地区での取り組みであるが、要は頻回ER受診、頻回CT、頻回MRI、頻回入院などの患者をピックアップし、地図上にプロットしていくと、実はホットスポットと彼のいうところの患者の集積区域があるとのこと。そして、実際にそこにいってみると、いろんなことがわかるのだが、たとえばトコジラミの駆除をするお金がないことが頻回ER受診理由だったりする。かれは特に健康の社会的決定因子(SDH)を重視している。そうした患者に多職種連携による継続ケアと、地域ぐるみの話し合いなどを提供することによって、社会的決定因子による影響を極力減らし、経験される健康状態が一定改善し、実際にその地域の医療費が激減した。おそらく東京などの日本の大都市におけるHealth disparityの問題を考える上で非常に示唆的だと思われる。

 いずれにしても、診療所や病院外来の患者群を、疫学でいうところの「Population at risk」と捉えることの重要性が再び高まっていると思う。しかし、このことは、家庭医療の原則として、A Textbook of Family Medicineの中でIan McWhinneyがすでに強調していたことなのである。

 

参考文献・サイト

Population Health Management (PHM):株式会社日立総合計画研究所

www.newyorker.com

cepc.ucsf.edu

https://instagram.com/p/169RhWS-dX/

満開 #spring