現代日本のプライマリケア外来において一般外来担当医が困難性を感じるのは、むしろ後期高齢者、フレイル、多疾患併存(multimorbidity)、社会経済的複雑性をもった患者でしょう。こうした患者レイヤーは、外来では「慢性疾患」患者と呼ばれているのですが、たとえば糖尿病のみで通院している患者も「慢性疾患」患者と呼ばれています。多疾患併存と単一疾患は別のレイヤーと考えるべきです。
そこで、こうした現代的「慢性疾患」レイヤーの外来患者のチェックポイントを教育的枠組みとして整理しておくことは有用だと思います。
僕が提案したい枠組みは以下のようになります。
M Multimorbidity:
多疾患並存状態かどうか?
どの疾患に対してだれがどう対応しているのか?
ポリドクター状態か?
問題リストはBiopsychosocialにリストアップされているか?
F Function
日常生活機能で制限はあるか?
ADL、IADLは評価されているか?
認知機能評価されているか?
G Guidlines & Goals
プライオリティの高い疾患のガイドラインの概要は知っているか?
「落としどころ」としてのゴールはなにか?
I Intervention
どのような介入がなされているか?
ポリファーマシーか?
生活指導はされているか?
介護保険サービスなどフォーマルなサポートはなにか?
家族や友人などのインフォーマルなサポートはあるのか?)
P Pain, Palliation & Prevention
どこかに痛みはないか?
advanced care planningに関する対話が必要か?
ワクチンなど予防医療の適応はあるか?
S Salutogenesis
健康生成論的アプローチを行ったか?
患者の強みと健康資源はどこか?
自己の一貫性を保障するルーチンはなにか?
これらをまとめてMFGIPS(エムエフジップス)モデルと呼びたいと思います。
この枠組みで複雑さを増しているプライマリケア外来を見直してみると、診療の質の向上につながるかもしれません。
*このエントリーは医学書院「総合診療」2020年03月号に寄稿したエッセイを要約したものです 。
*雑誌リンク⇒ https://www.igaku-shoin.co.jp/journalDetail.do?journal=91766