やりますか?理論家庭医療学研究会

家庭医療学は様々な源流があるけれども,やはりIan McWhinneyによる1980年代の仕事が圧倒的に重要である。いわゆる患者中心の医療に関する一連の研究も当然その時代の重要なアウトプットなのだが,僕的には,A Textbook of Family Medicineにつながる哲学的…

家庭医療学研究がマヂに盛んになってほしいです

ふたたび、家庭医ってなんですか? いいかげんもう定義云々はやめにしたいが、日本では今後おそらく以下の仕事をする医師が家庭医と呼ばれることになるだろう。 *診療所あるいは病院において非選択的プライマリ・ケア外来診療を行う*在宅ケアチーム及び地…

複雑困難事例により地域力は上昇する

複雑困難事例は、しばしば問題解決が困難で、予想外の要因が途中で絡まりながら。見守るしかないという帰結になる場合があります。かかわったさまざまな職種の人たちは、ある意味敗北感や無力感に陥ることもあります。しかし、スタッフで、時には対象となる…

Expert Generalist PracticeにおけるInterpretive Medicineの意味

健康とは、繰り返し必ず実施している日々の生活(ルーチン)を保証ためのリソースであるという前提で、健康をどう支援できるかを考えることが自己あるいは主体へのアプローチだといえるでしょう。生活ルーチンは、たとえば職業上の複雑な業務から、日々の買…

現時点での「自分的」Expert Generalist Practiceの概念図

プライマリ・ケア連合学会設立の意味を振り返る

医学の世界に限らす比較的少数派のグループは、立場の違い、理論的違いによる対立と分裂が生じやすいものです。逆に集団として大きな力をもつと、内部の対立があっても全体としてのまとまりはなんとか維持されます。例えば政権与党内には様々な派閥があり、…

専門医から内科系総合医や家庭医への転向

最近、長らく循環器内科医を病院でやっていたが、諸事情で診療所開業することになったが、どんなふうに自分を整え、診療にフィットさせたらいいのだろうか?とか、あるいは眼科医をずっとやっているのだが、内科の勉強も続けていきたいのだが、どうしたらよ…

医学教育について15年前に考えていたこと

今回は、今から15年ほど前、卒後臨床研修必修化直前に日本医療評価機構と日本医師会の合同で開催されたシンポジウムでの僕の講演記録です。非常に古いものなのですが、当時医学教育にかなり燃えていた時期でした。 もう15年前なので、話の内容はそうとう古く…

お節介な家庭医療がめざすこと

25歳の男性が、咽喉が痛く、37.5度の熱があるとのことで、ある日診療所を訪れました。所見からウイルス性の咽頭炎つまりは、「カゼ」という診断をしました。ここで、薬を処方し、診察を終了するというのが、まあ普通の診療ですし、それ自体は正しい診療です…

なぜ省察的実践家としての家庭医なのか?

地域のかかりつけ医としての家庭医はどのようにして育つのか?これは私自身がどの様に自らを成長させていくかということでもあり、また若い家庭医をどう教育し、育てればいいのかということにもつながります。 家庭医の仕事の特徴は何でしょうか?たとえば、…

ソロプラクティス開業を考えている若い医師へのアドバイス

最近、各専門内科や外科系各科の中堅医師から、「開業することになっているんだけど、なにを勉強すればいいの?」「研修しなくても大丈夫?」という質問をされたり、アドバイスを依頼されることが増えているような気がします。むかしみたいに、コンサルタン…

13年前の「教育学」VS「家庭医療」の対談を読み直す

今回のエントリーは,今からおよそ13年前に,当時東京大学教育学部教授でおられた佐藤学先生との雑誌企画対談を収録したいと思います。すでに,この記事を手に入れることは、現時点ではほぼ不可能なため,手元の資料をもとに再構成してみました。実際に出版…

かかりつけ医機能を本気で身につけるには?

日医かかりつけ医機能研修制度については、日本医師会が「かかりつけ医機能」に関して以下のように「定義」を明示しているところに注目すべきであろう。 1.患者中心の医療の実践 2.継続性を重視した医療の実践 3.チーム医療、多職種連携の実践 4.社…

ブログとインターネット

長らくブログ更新できずにいましたが、代替としてPodcast配信などしておりました。しかしながら、更新していないにもかかわらず毎月1000以上のビューがあり、古いエントリーもよく読んでおられる熱心な読者の方たちがいることを知り、大変もうしわけなく思っ…

高齢者多疾患併存、その診療のコツ

日本における多疾患併存の現状はまだまだ明らかになっていない 多疾患併存(Multimorbidity)とはいくつかの慢性疾患各々が病態生理的に関連するしないにかかわらず「併存」している状態であり、診療の中心となる疾患を設定しがたい状態をいいます。例えば、…

看護研究が家庭医療に寄与するもの

Introduction 看護研究に医師が日常的に接するという場面はこれまであまりなかったのではないかと思います。看護研究は看護の研究であって、医師の仕事や役割は看護とはちがうところにあるとかんがえられていたこともその原因のひとつでしょう。看護師と医師…

日本の総合診療が学ぶべきもの

日本の総合診療は諸外国の実践から何を学ぶべきか? 現在議論されている日本における総合診療が、諸外国ではどのような医療形態にあたるのかは実は明確になっていない。Family Medicine(北米、東アジアでの名称)あるはGeneral Practice(欧州、コモンウエ…

看護理論を多職種カンファレンスに活かす

昨年はケアマネージメントに関する検討会に医師として出席する機会が多くありました。およそ20回にわたるその検討会には、主として首都圏のケアマネージャー達が担当しているとびきりの困難事例が持ち込まれます。そして、各地から集まったケースワーカー、…

地域包括ケア時代の看護の役割

今年実施したイベントで特に印象深かったのは,吉江悟さんをゲストに迎えて,地域包括ケア時代の看護の役割をテーマにして参加者と一緒に考えたNursing Cafeでした。 その際のディスカッションの記録をSoundCloud(Podcastにも配信されています)にアップし…

総合診療のエキスパートとしての「病院総合医と家庭医」の連携

かつての診療所プライマリ・ケア医(多くは開業医だった)と病院医師の関係は,出身医局といういわば相撲業界的な部屋制度に依存していたといえるかもしれない。だから,出身大学や出身病院と連携可能な場所でプラクティスをおこなう医者が多かったといえる…

家庭医療におけるSpecialist Drugについて

Specialsit Drugとは? 以前は入院あるいは病院専門外来で治療されていた疾患や病態であったが,ヘルスケアシステムの変化により,プライマリ・ケア外来や在宅診療での継続治療へ移行するケースが徐々に増えている。また,専門外来における専門的治療を継続…

日本における家庭医像の更新

Reeveら*1によると,英国では「GP,家庭医は専門医にのぼるはしごから落ちた医師である」というLord Moranの50年以上前の呪いのような言説にどうしたら対抗できるのかということに関して,英国の若手GPの研究者が果敢な試みをおこなっている。 日本の場合,G…

番外:タイムラプス動画

ちょっと本来のこのブログの目的からはずれている投稿がつづいていて,スミマセン。今後の事務所(仮)からの各種発信のための方法やがジェッドのお試しをやっているのでした。これは4Kではありませんが,Galaxyの動画色合いがとても気に入っています。こん…

読書をソーシャルに結び付けられるか?

読書というのは,日常的な,あるいはソーシャルなネットワークからいったん切れて,コンテンツに孤独に向かい合う楽しみのことである。したがって,読書自体をリアルタイムに共有することは難しい。読み終わった後にさまざま語り合うことは可能だが,たとえ…

ポッドキャスト再発見

この2ヶ月はブログの更新ができずに申し訳ありません・・・ じつは,このところPodcastというメディアに非常に興味を持ちまして,いろいろ調べたりトライしたりしておりました。むろん昔からその存在は知っておりましたが,最近あるきっかけから,雑談や対談…

ブログ開設4周年

ブログ「藤沼康樹事務所(仮)」開設4周年を迎えました! この間と投稿数もあまり延ばせず,すくないエントリーでしたが,一つ一つのエントリーはかなり気合をいれて作りました。案外,投稿を楽しみにしておられる読者の方も結構いらっしゃって,嬉しいです…

家庭医療学と糖尿病診療の関係について

2型糖尿病と患者中心のアプローチ 2012 年 及び2015年[1]に、ADA(米国糖尿病学会)/EASD(欧州糖尿病学会)による 2 型糖尿病治療の新たな Position Statement (合同声明)が発表された。このガイドラインは「患者中心の治療」という考え方を取り入れ たこ…

小説よまない家庭医にすすめたい恋愛小説「マチネの終わりに」

今回は私が注目して,フォローしている現代作家平野啓一郎氏の手による小説で,2016年の話題作でもあった恋愛小説「マチネの終わりに」(毎日新聞出版)を取り上げます。この作品は,アラフォーの天才クラシック・ギタリストの蒔野と,同じくアラフォーで紛…

米国の家庭医療専門医制度から学ぶべきものを再考察

はじめに プライマリ・ケアに携わる医師のトレーニングは、常にその国や地域のヘルスケアシステムから要請される医師像に依拠するものである。しかし、例えば心臓外科医ならば、心臓外科医にもとめられるコンピテンシーはヘルスケアシステムに依存することな…

省察的実践家としての家庭医

省察的実践家とは何か 医師の専門領域の細分化は、患者にきめ細かなサービスを提供できるようになるという利点があるが、複合的・領域横断的な複雑な問題に対応できなくなるというリスクがある。現代において、細分化と患者ニーズの複雑化が同時並行的に進む…