専門職の連携という観点からみた生涯学習(Continuing Professional Development: CPD)の分類が試みられている。Barrによる以下の論文を参照しつつ、自分なりに整理してみたい。
Barr H. An anatomy of continuing interprofessional education. J Contin Educ Health Prof 29(3):147-50, 2009
*Uniprofessional CPD:UCPD
これは従来の生涯教育で、その専門職の領域で自己完結的に行われる。その専門職に特異的な知識技術のアップデートがこれにあたる。たとえば、臨床上の疑問をPoint of Careの場面で解決したり、心房細動の治療について総論的なレビューの講義をきいたりすることがこれにあたる。また病院のケースカンファレンスに参加するのもこれに含まれるだろう。健康問題の構造分類では、おそらくSimple&Complicatedレベルの問題の学習に有効だろうと思われる。
*Multiprofessional CPD:MCPD
これは複数の専門職が共通の課題を学ぶ場面が想定されている。たとえば、介護保険であるとか、医療の安全性、その施設(病院等)のマネージメントを、机を同じくして学ぶということである。このタイプの学習が専門職連携教育(IPE)と混同されている状況が日本にはある。管理的な側面、経営的な側面に関しての問題を学ぶタイプのCPDに有効だろう。
*Interprofessional CPD:ICPD
これは複数の専門職からなるチームがなんらかの問題を解決する場面を想定した学びである。お互いの職種に特徴的な認識のフレームによる考えに学びながら、問題のどんな場面でどんな専門職が介入すべきかを考え、その介入結果をうけて、さらにチームでなにをなすべきかを議論しつつ、再び実践するというプロセスを繰り返すことである。そのプロセスの中で、各専門職の間にある認識のギャップやバリアを認識し、またその境界をこえて議論したりすることから、様々な学びが生まれるだろう。 おそらく、コミュニケーション、交渉、システム思考、倫理的思考、感情面のそれも含めた省察などのスキルがICPDでの学びの課題となるだろう。
健康問題の構造分類では、おそらくComplex& Chaosレベルの問題の学習に有効だろうと思われる。
ちなみに生涯学習の文脈で語られる専門職連携教育は、Continuing interprofessional education:CIPEという用語が使われる。
おそらく医療者にとっての、真の生涯学習は、UCPD+MCPD+ICPDである。上述の3つのCPDをうまくブレンドしながら、医療者としての成長を継続保証していきたいものである。