看護理論と看護のメタ・パラダイム イントロダクション

 看護ほど、病いのなかにいる人間に対してケアを提供しながら、その実践のなかから理論やセオリーを導き出そうという困難な道程を歩んでいる領域はないと思うが、そうした実践からうみだされた理論が看護理論である。

 看護学という学問領域は、人間とはどういう存在なのか、人間と環境の相互作用はなにか、健康とはいったいどういう状態なのか、そしてそもそも看護とはいったいどのような実践なのかということをめぐって展開されているといってよいだろう。

 城ケ端ら*1によれば、メタパラダイムとはある学問を体系化するための概念的枠組みのことであり、看護におけるメタパラダイムとは、 4つの概念、すなわち人間、環境、健康、看護か ら成 り立っていることは、かな りの同意を得ているとされる。

 おそらく規範的統合における基盤としての健康モデルを考えるときに、看護理論はきわめて重要である。看護理論における健康モデルが、医療者全体に共有されることも充分ありうるだろう。

 このメタパライムに関して、定義あるいは言及している理論家としては、ヴァージニア・ヘンダーソンとベティ・ニューマンをあげることができる。

 

ヴァージニア・ヘンダーソンの看護理論のメタ・パラダイム

人間とは

14の基本的ニードを持ち、必要なだけの体力、意志力、知識を持てば自立していける存在である

**14の基本的ニード**

・正常に呼吸する
・適切に飲食する
・身体の老廃物を排泄する
・移動する、好ましい肢位を保持する
・眠る、休息する
・適当な衣類を選び、着たり脱いだりする
・衣類の調節と環境の調整により、体温を正常範囲に保持する
・身体を清潔に保ち、身だしなみを整え、皮膚を保護する
・環境の危険因子を避け、また、他者を傷害しない
・他者とのコミュニケーションを持ち、情動、ニード、恐怖、意見などを表出する
・自分の信仰に従って礼拝する
・達成感のあるような形で仕事をする
・遊び、あるいはさまざまな種類のレクリエーションに参加する
・“正常”発達および健康を導くような学習をし、発見をし、あるいは好奇心を満足させる

環境とは

ニードの充足に影響を及ぼすものすべて

健康とは

必要なだけの体力、意志力、知識があれば、自力で基本的ニードを満たすことができる状態のこと

看護とは

すべての人々が基本的にニードを充足し、自立あるいは安寧な死をむかえることができるように援助すること

 

ベティ・ニューマンの看護理論のメタ・パラダイム

人間とは

人間はひとつの開放系である

環境とは

ある状況における人間を取り巻く内的・外的作用

健康とは

良好な状態あるいはシステムの安定性のこと

看護とは

人間・家族・集団・社会を援助し、良好な状態を達成することである

 

 ヘンダーソンの看護理論は、印象としてはナイチンゲールの直系的な具体性を感じる。看護覚書の具体性とホモロジーがあると思う。 

 また、ニューマンのシステム論は、家庭医療学のパラダイムと非常に親和性が高いと思う。ちなみに、メタ・パラダイムという視点からすると、おそらく従来の医学と家庭医療学は違うパラダイムにいることは間違いないだろう。

 

 看護理論は医療者教育全般に通底する普遍性があるように思うので、今後もResearchしていきます。

 

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*1:城ケ端初子, 樋口京子. (2007). 看護理論の変遷と現状および展望. 大阪市立大学看護学雑誌, 3, 3