日本におけるEcology of Medical Care:10年で変化したのか?

 2003年に福井ら*1によるEcology of Medical Careの論文が出てから10年経過しました。そして2014年にTakahashiらが同様の研究を発表している*2。これは学会抄録集のみがPublsihされているので,詳細なデータを確認できませんが,非常に興味深いです。

 結論から言うとこの10年間で,日本人の受療行動パターンはあまりかわっていないということでした。

 欠損値多いですが,一応自分なりに以下の表にまとめてみました。ちなみに,

OTC:Over the counter drug(売薬を購入)

CAM:Complementary and alternative medicine(相補代替医療

です。

f:id:fujinumayasuki:20160315153816p:plain この表から読み取れることを自分なりにまとめてみると,

1.受療行動として最初に選択するところとして,診療所と病院の外来が大多数だということ,しかも病院志向というふうにいわれているわりに診療所はよく利用されている状況はこの10年で変わらない。

2.OTCは非常によく利用されており,街の薬局がプライマリ・ケアの重要な担い手である可能性がある。

3.相補代替医療も病院外来以上によく利用されている。

4.おそらく大学病院の入院1人あたりのBackgroundPopulationは3000人以上だろうということ。

 

 医者として考えると,プライマリ・ケアの外来診療として病院は相当の役割を果たしているが,しかしその役割に応じた体制や技術構造を準備しているのかということが問題になります。地域の病院に病院内診療所といえるような部門,あるいは家庭医診療科のような部門をつくることは地域ニーズにもあっているはずだろうと思うのです。

 

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*1:Fukui T,  et al. The ecology of medical care in Japan. JMAJ 48(5); (2005): 163-167

*2:Takahasi O, et al. The ecology of medical care in Japan revisited. Value in Health 17(7); 2014: A434

プライマリ・ケア担当総合診療医の臨床推論(承前)

 通常の診療は、それが初期診療であれば、症状/主訴から病歴聴取、身体診察、各種検査を経て医学的診断にいたり治療が可能になると考えられているが、それだけで実際の初期診療が成立しているわけではない。
 Fukuiら*1によると一般日本人1000人が一ヶ月間になんらかの不調を自覚するのが862人、そのうち医師に受診するのが307人(診療所に232人、病院外来に88人)とされた(下図参照)。

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 つまり、地域で不調を自覚する人たちのうち約65%が医師を「受診しない」。受診しない場合は、セルフケアやOTCの利用などが考えられるが、医師を受診する場合は、なんらかの動機あるいは受診ドライブがかかって医師を訪れる。たとえば、頭痛が主症状で来院した患者が、頭痛をなんとかしてほしいということではなく、この頭痛がくも膜下出血と関係があるのではないかという不安で来院するようなことはプライマリ・ケアでよくあることである。つまり、頭痛が主訴であるが、「くも膜下出血が心配」は受診理由である。この主訴と受診理由がキメラ上になっている患者への対応が初期診療の最大の特徴のひとつであり、主訴に対する診断と、受診理由の「診断」が必要である。

 この受診理由の診断は患者にとっての病いの意味(Meaning of illness)を明らかにするプロセスといえるが、そのための必要なスキルは患者中心の医療の方法に集約されているといってよい。このMeaning of illnessはこれまでおそらく医学のアートの部分といわれていたところだが、これもやはり認識の枠組みがある。

 さて、とりあえず、総合診療医に求められるのは、非選択的な健康問題の相談ができることである。とりあえずどんな問題にも対応し、相談にのれるということであるが、あくまで「相談」であって、大部分の健康問題の「診断・治療ができる」と記述していないことに注意したい。相談によりおよそ90%の問題は総合診療医で対処可能だが、必要な場合は専門家への紹介をするが、この紹介もある種の問題解決である。
 そのためには、年齢、性別、臓器にかかわらずプライマリ・ケアにおける主要症状に対するアプローチ法を熟知することが必要で、経験にたよるだけでなく、症状へのアプローチに関する系統的で整理された知識が必要である。たとえば「プライマリ・ケアにおける頭痛へのアプローチについて20分で初期研修医にレクチャーできる」といった具体的課題を設定するのも有用だろう。総合診療専門研修の目標に挙げられている以下の症候については、外来や救急の現場での経験だけですべてに習熟するのは困難であるが、知識を常にブラッシュアップしておきたい。

 ショック、急性中毒、意識障害、全身倦怠感、心肺停止、呼吸困難、身体機能の低下、不眠、食欲不振、体重減少・るいそう、体重増加・肥満、浮腫、リンパ節腫脹、発疹、黄疸、発熱、認知機能の障害、頭痛、めまい、失神、言語障害、けいれん発作、視力障害・視野狭窄、目の充血、聴力障害・耳痛、鼻漏・鼻閉、鼻出血、嗄声

 総合診療医の臨床推論プロセスの力量設定は、繰り返しになるが、プライマリ・ケア外来診療、あるいは軽症救急で実施できる能力を念頭においている。
 特に重要なことは、事前確率が、地域あるいは施設のコンテキストによってことなることを前提に診療ができることである。そして場所によって臨床推論のプロセスを切り替えることができることが、総合診療医に求められる「多様な場での診療」を妥当なものにするからである。
 例えば内科学における臨床推論パターンは、患者の問題は、A、B、C、D・・の診断名の中のどれか?と問う構造をもっているが、総合診療特にプライマリ・ケアにおいて必要な推論パターンは、AかNot Aか?ということが求められる。Aとは、生命に危険が及ぶ可能性があるもの、今すぐ治療を開始すれば経過や予後に影響をあたえることができるもの、専門医に紹介することが有益とかんがえられるもの、などがあげられるだろう。ちなみにMcWhinney*2は上述の2つの推論パターンについてホワイトヘッドやポパーを援用しつつ論理的には2つは等価であると論じており、後者が前者に比して不徹底であるというわけではないとしている。
 特に見逃してはいけないものである症状・症候・所見はred flagsと呼ばれるが、一般的な健康問題におけるred flagsを捉えることができること、必要な除外診断能力が総合診療医にもっとも求められる臨床推論であろう。正しい診断にいたることがいつも可能というわけではないのが、プライマリ・ケア現場の所与の属性である。このあたりをどうしても不徹底と感じてしまう場合、プライマリ・ケアの現場は苦痛になってしまうだろう。
 また、プライマリ・ケアにおける臨床推論においては、継続ケアの結果えられる患者の様々な病歴に関する知識、家族の状況、地域の疾患頻度の特徴などが影響をあたえることはいうまでもない。しかし、こうした情報は臨床判断のうえで有用な場合もあるが、バイアスの元にもなることには注意したい。
 そして、一般的な検査や画像診断の感度特異度を考慮した検査選択と解釈もプライマリ・ケアにおいては重要になる。大病院や高度救急センターにおける検査のオーダーのしかたや解釈をプライマリ・ケアにそのまま持ち込むのは概して不適切である。なぜなら、検査前確率が全く違うためであり、同じ腹痛でも、プライマリ・ケアと大病院では鑑別診断のプライオリティも異なり、検査結果の解釈も変化する。診療の場によって、適切な思考プロセスにチェンジできることが総合診療医の特徴である。
 治療に関しては、Common disese群のガイドラインを知ることだけでなく、ガイドラインの批判的吟味ができることも総合診療医には求められるが、これは患者の権利擁護にも繋がるだろう。むろん、Common diseaseの経験豊富なパール群に触れることも大切である。
 総じて、総合診療医に臨床推論からケアや治療に至るプロセスは、Sackettら*3によるEBMの定義、

「Evidence based medicineは、一人ひとりの患者のケアについて意思決定するとき、最新で最良の根拠を、良心的に、明示的に、そして賢明に使うことである。Evidence based medicineの実践は、個人の臨床的専門技能と系統的研究から得られる最良の入手可能な外部の臨床的根拠とを統合することを意味する」

 とほぼ同等であると言ってもよいだろう。総合診療教育においては、日常的なEBMに関する研鑽をうながす教育が求められるだろう。

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*1:Fukui T, et al. The ecology of medical care in Japan. JMAJ 2005;48(4):163-167.

*2:McWhinney, I. R. (1997). A textbook of family medicine. Oxford University Press.

*3:Sackett DL., et al. "Evidence based medicine: what it is and what it isn't." BMJ: British Medical Journal 1996; 312: 71.

アカデミックな総合診療に参入する家庭医に向けて

 1966年、Ian McWhinneyが37歳のとき、医学においてある分野が専門性があるとされる条件について記述しています。それは、


(1) A unique field of action.(特異的な医療活動の場がある)
(2) A defined body of knowledge.(よく定義された知の体系がある)
(3) An active area of research.(活発に行われる研究の領域がある)
(4) A training which is intellectually rigorous.(知的にしっかりとした教育が存在する)

の4つ*1です。


 日本の総合診療はこの4つとも備えることができます。ただ(2)(3)に関しては家庭医療学をビルトインする必要がある。(1)はとりあえずプライマリ・ケア現場、(4)は真正のレジデンシー構築でいいでしょう。問題は(2)(3)です。

家庭医療の知の体系については、すでに家庭医療学の諸研究に基づくGeneralist Wheel*2により可視化されています。このGeneralist wheelの各象限と境界に関する知識や研究全体の統合がアカデミックな環境で総合診療を教育研究する上では必須。研究方法論としての量的研究、質的研究、混合研究法も知っておく必要がある。アカデミックな総合診療は知的に相当タフな領域ですが、チャレンジしがいがありますね。

 

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大学にこの春転出する総合系の若手の先生方も多いと思いますが、上記4つを常に頭に入れておいてほしいです。

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*1:Mcwhinney IR. General practice as an academic discipline: reflections after a visit to the United States. The Lancet 1966; 287(7434): 419-423

*2:Green LA. The research domain of family medicine. The Annals of Family Medicine 2004; 2(suppl 2): S23-S29.

ケアの継続性と総合診療医

 

 総合診療専門医のコア・コンピテンシーとしての包括統合アプローチは非常に多くの臨床能力を包含する領域である。総括的な内容は以下のとおりである。


 「プライマリ・ケアの現場では、疾患のごく初期の未分化で多様な訴えに対する適切な臨床推論に基づく診断・治療から、複数の慢性疾患の管理や複雑な健康問題に対する対処、更には健康増進や予防医療まで、多様な健康問題に対する包括的なアプローチが求められる。そうした包括的なアプローチは断片的に提供されるのではなく、地域に対する医療機関としての継続性、更には診療の継続性に基づく医師・患者の信頼関係を通じて、一貫性をもった統合的な形で提供される」(日本専門医機構:総合診療専門研修カリキュラムより)

 今回注目したのはこのコア・コンピテンシーの一般目標4及びそのサブ項目としての4つの個別目標である。

一般目標4:医師・患者関係の継続性、地域の医療機関としての地域住民や他の医療機 関との継続性、診療情報の継続性などを踏まえた医療・ケアを提供する能力を身につける。
個別目標1:患者の抱える健康問題について継続的に関わり、そこで得られた患者のコンテクストや 医師・患者間の信頼関係を診療に活かすことができる
個別目標2:患者・家族の抱える解決困難な苦悩に対しても、身近な存在として傾聴し支え続けるこ とができる
個別目標3:地域における自施設の役割を十分に理解し、長期的な地域との関係性を踏まえた医療・ ケアを提供することができる
個別目標4:診療情報の継続性を保ち、自己省察学術的利用に耐えうるように、過不足なく適切な 診療記録を記載することができる

 

 この一般目標及び4つの個別目標群は、ケアの継続性に関してその多面性を理解し、継続ケアのもつパワーを効果的に使い、継続ケアを維持するためのスキルを獲得することが総合診療医に求められることに由来したものであるといえるが、この辺りは家庭医療学の領域で幅広く研究されてきたものだが、内科系医師にはあまりなじみのないものかもしれないので、すこし解説してみたい。

 

 64歳男性、高血圧症でA総合診療医が12年間フォローアップしているが、同時に定期的な大腸がん検診を勧めているといった事例を考えてみよう。

 「継続的にみる」ということでまず思い浮かぶのがこうした特定の(慢性)疾患を同じ医師が治療し続けることであろう。確かに一般的な慢性疾患や健康危険因子の長期フォローアップは総合診療医の重要な役割であるが、さらに専門医への紹介のタイミングの理解,あらたに生じる健康問題への対応,ライフステージ毎に必要な予防医学的介入などは総合診療医による継続ケアの特徴といえるだろう。

 同じ医療者に長くケアされる継続性は縦断的継続性 (longitudinal continuity)と呼ばれる。これはいいかえれば,同じ医者にかかり続けることであり、それが継続性だと一般には思われているが、ケアの継続性はもっと多様な側面を持っている。
 

 次に、71歳男性が5年前に総合病院消化器外科にて早期胃がんにより胃切除術を受け、手術を実施した外科医B医師の外来に3ヶ月に1度通院していたが、特に問題はないため今回で定期診療は終了となった、という事例を考えてみる。

 この事例の継続性の基盤はあくまで「疾患」であり、治療の終了と同時に患者医師関係は終了する。こうした特定の健康問題が一定解決したのち、フォローアップ目的で総合診療医に患者が紹介される場合も近年増加している。また,転居などにともない、スムーズに医療内容が引き継がれる必要性が増してきており、正確な情報の整理や伝達が重要である。こうした情報の観点からみたケアの継続性を情報継続性(informational continuity)と呼ぶ場合がある。急な紹介や、知らないあいだに救急受診した先からの照会などに、自分以外の医師が診療録をみて適切な情報提供ができるようにカルテ記載ができることが目標になるだろう。  


 対比的に、24歳女性発熱,咽頭痛で受診,急性咽頭炎と診断されたが、その2年後、膀胱炎で再度同医師を受診した、というような事例を考えてみる。かかりつけ医としても期待される総合診療医の場合、疾患に由来した問題が解決すれば、患者医師関係が終了するかというと、そうではない。診療を通じて「またなにかあったらこの医師に相談しよう…」という思いがその患者に生まれることを目指しているからである。その患者の健康問題の解決のためのリソースとして,その医師が「かかりつけ医」として存在するようになることが,総合診療医がその地域で役に立つ医師になれる条件の一つである。
 では、地域住民がその医師を自分の「かかりつけ医」と認める条件とはなんだろうか。篠塚ら[1]によると以下の構成要因を満たす場合にその医師はかかりつけ医となるとされた。

  • よくコミュニケーションがとれ、話をよくきいてくれたり、わかりやすく説明してくれる
  •  受診のための環境がよく、居住地から近く,その医師の外来単位が多い
  • 自分の仕事や生活の様子、性格、価値観などが知られており、職種にかかわらず長く働いているスタッフがいること
  • 自分と同じ目線にたってくれて、自分の考えも言いやすく、何でも相談できて、意思決定に参加できる
  • しっかりとした知識や技術をもっていて、幅広い健康問題に対処できる。わからない場合、手におえない場合はすみやかに、適切な施設へ紹介してくれる

 ここに列挙した5つの要素は現代的な意味での総合診療医のコア属性となるものでもある。上述の診療ができれば、たった一回の診療でも、しっかりした医師患者関係が築かれることがあり、これは対人関係上の継続性(interpersonal continuity)と呼ばれる.
 

 次に58歳女性で、5年前に糖尿病といわれるも放置していたが、再度健診にてHbA1c8.8%を指摘されA総合診療医を受診。その後同医師に2週間に一度のペースで4回診察をうけ、糖尿病への意識が高まり食事療法、運動療法に取り組むようになったという事例を考えてみる。
 おなじ医師が継続的にみることで患者に何らかの変化が生じることはしばしば経験するところである。この事例では先述したinterpersonal continuityが構築され、強化された患者-医師関係のなかで糖尿病に対する行動が変容したと思われる。継続性のもつ「癒し」の効果や変化をもたらす力を示している。Feeman[2]らはこうしたケアの継続性のもつ力を有効に活用することが総合診療医に特徴的なスキルであるとしている。
 

[1]: 篠塚雅也, 大野毎子, 藤沼康樹, 松村真司. かかりつけ医に求められる条件についての質的研究. 病体生理. 2002, vol. 92, p. 19-23.

[2]: Freeman, G. K.; Olesen, F.; Hjortdahl, P. Continuity of care:   an essential element of modern general practice? Family Practice. 2003, vol. 20, p. 623–627.

 

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明けましておめでとうございます!&2015年のまとめ

 みなさまあけましておめでとうございます.

 今年も「藤沼康樹事務所(仮)」をどうぞよろしくお願いいたします.

 更新もできるだけ頑張っていきたいと思っています.

 

 さて,週一日大学の職員をしているために,業績まとめみたいなものを年に一度提出する必要があります.こうしてまとめてみますと,自分は著述業的な仕事をしているのだと思ったりします.なお,ひろいきれない,書評みたいなのもあるはずですが,だいたい大学のまとめの書式で作っています.

 大学では原著や報告が評価されますので,エッセイや解説的なものはすべて「その他」送りになりますが,思い入れのあるものは,結構エッセイや解説的なものが多いので,自分の志向とアカデミックな評価が合致しないこともよくわかります.

 今後,研究論文もすこしづつ書いていこうかと思っていますが,むしろ研究や学術論文の作法をとりいれた,役に立つ面白い書きものをしていきたいと思います.

 (このリストでは,今年実施した講演やWS等は省いてあります.)

 

原著

<2015年4~12月>

  1. Tominaga T, Matsushima M, Nagata T, Moriya A, Watanabe T, Nakano Y, Fujinuma Y : Psychological impact of lifestyle-related disease disclosure at general checkup: a prospective cohort study. BMC family practice, 16(1), 60, 2015

 

学会発表抄録

<2015年4~12月>

  1. 藤沼康樹:日本プライマリ・ケア連合学会家庭医療専門医認定試験の現状と課題, 第6回日本プライマリ・ケア連合学会学術大会抄録集, 127, 2015
  2. 藤沼康樹:総合診療医のコンピテンシーに基づく生涯学習~学習ポートフォリオに挑戦!, 第6回日本プライマリ・ケア連合学会学術大会抄録集, 168, 2015
  3. 渡邉隆将, 松島雅人, 藤沼康樹, 阿部佳子, 稲田美紀, 菅野哲也, 喜瀬守人, 今藤誠俊, 高橋 慶, 富永智一, 西村 真紀, 平山陽子, 増山由紀子, 村山慎一, 安来志保 : 研究中間報告第2報:EMPOWER-Japan Study (Elderly Mortality PatientsObserved Within the Existing Residence), 第6回日本プライマリ・ケア連合学会学術大会抄録集, 281, 2015
  4. 増山由紀子, 清田実穂, 喜瀬守人, 藤沼康樹 : 家庭医療後期研修における Case-based Discussion(CbD)導入の経験, 第6回日本プライマリ・ケア連合学会学術大会抄録集, 359, 2015
  5. 田中公孝, 渡邉隆将. 藤沼康樹 : 家庭医療後期研修における e ポートフォリオの実 践報告, 第6回日本プライマリ・ケア連合学会学術大会抄録集, 360, 2015
  6. 清田実穂, 増山由紀子, 喜瀬守人, 西村真紀, 藤沼康樹 : リーダーシップ・トレーニング・フェローシップ・ オンサイト(Leadership Training FellowshipOnsite:LTF-onsite)の試み, 第6回日本プライマリ・ケア連合学会学術大会抄録集, 364, 2015
  7. 岡崎寛子, 小泉美都枝, 前里美和子, 河合由紀, 鈴木比有万, 鈴木佳奈子, 喜瀬守人, 藤沼康樹, 印牧義英, 中島康雄, 福田譲 : 乳癌検診受診率向上に向けて 家庭医との知識共有がもたらす可能性, 日本乳癌検診学会誌24(3), 506, 2015
  8. 大西 弘高, 藤沼 康樹, 高柳 亮 : 家庭医療専門医認定におけるポートフォリオ評価の信頼性, 医学教育46(Suppl), 176, 2015

 

報告書

なし

 

 

単行書

<2015年1~3月>

  1. 藤沼康樹(編集):新総合診療医学:家庭医療学編(第2版), カイ書林, 2015
  2. 藤沼康樹:Introduction:家庭医・家庭医療を学ぶ若き医療者のために, 藤沼康樹(編集):新総合診療医学:家庭医療学編(第2版), カイ書林, 2015
  3. 藤沼康樹:Ⅱ-3 ケアの継続性, 藤沼康樹(編集):新総合診療医学:家庭医療学編(第2版), カイ書林, 2015
  4. 藤沼康樹:Ⅱ-4 生物心理社会アプローチ, 藤沼康樹(編集):新総合診療医学:家庭医療学編(第2版), カイ書林, 2015
  5. 藤沼康樹:Ⅱ-5 患者中心の医療の方法(Patient centered clinical method), 藤沼康樹(編集):新総合診療医学:家庭医療学編(第2版), カイ書林, 2015
  6. 藤沼康樹, 森永大輔:Ⅱ-6 家庭医療の枠組みとしてのThe Clinical Hand, 藤沼康樹(編集):新総合診療医学:家庭医療学編(第2版), カイ書林, 2015
  7. 藤沼康樹:Ⅱ-10 複雑な臨床問題へのアプローチ, 藤沼康樹(編集):新総合診療医学:家庭医療学編(第2版), カイ書林, 2015
  8. 藤沼康樹:Ⅷ-2 地域基盤型医学教育の実践-診療所でどう教えるか指導医からの疑問に答える, 藤沼康樹(編集):新総合診療医学:家庭医療学編(第2版), カイ書林, 2015
  9. 藤沼康樹:Ⅷ-3 家庭医の生涯学習, 藤沼康樹(編集):新総合診療医学:家庭医療学編(第2版), カイ書林, 2015

<2015年4~12月>

  1. 藤沼康樹(編集) : 大都市の総合診療:ジェネラリスト教育コンソーシアム8, カイ書林, 2015

 

総説・短報・実践報告・資料・その他

<2015年1~3月>

  1. 酒井郁子, 大塚真理子, 藤沼康樹, 山田響子, 宮古紀宏 : IPEの達成とこれから 「地域で学ぶ」を中心に専門職連携コンピテンシーの確立 : 千葉大学亥鼻IPEの展開から, 看護教育56(2) , 112-115, 2015
  2. 藤沼康樹 : Dr.藤沼康樹のすべらない技, レジデントノート16(16). 2973-2980, 2015
  3. 藤沼康樹 : ブルーバックス 理系のためのクラウド知的生産術 メール処理から論文執筆まで(書評), 日本プライマリ・ケア連合学会誌38(2), 176-176, 2015

 

<2015年4~12月>

  1. 藤沼康樹:プライマリ・ケアにおけるマルチモビディティ(multimorbidity)の意味, 総合診療25(12), 13-16, 2015
  2. 藤沼康樹:超高齢社会におけるプライマリ-ケア医の心身医学的課題 認知症や経済問題などが絡む複雑困難事例への対応と臨床教育/臨床研究, 心身医学55(9), 1025-1033, 2015
  3. 藤沼康樹:研修医の育て方@診療所:ヤブ化しないための診療所教育, 治療97(8), 2015
  4. 藤沼康樹:日本の総合医療はどうあるべきか-新たな総合診療専門医制度の発足を迎えて 米国の家庭医療専門医制度から学ぶもの, カレントテラピー33(7), 713-717, 2015
  5. 岡山 雅信, 藤沼 康樹 : 日本の地域医療教育イノベーション, ジェネラリスト教育コンソーシアム7, 1-16, 2015
  6. 藤沼康樹:高齢者エマージェンシー-プライマリ・ケア医のためのスキルアップ大作戦 高齢者救急『困る前のその一手』 不要な救急受診&入院を防げるか?, 総合診療25(4), 380-384, 2015
  7. 藤沼康樹, 吉田伸 : 「家庭医」ってなんだ?, 週刊医学界新聞,第3153号, 2015年12月7日
  8. 藤沼康樹 : テイラー先生のクリニカル・パール1「診断にいたる道筋とその道標」(書評), 日本プライマリ・ケア連合学会誌38(3), 290-291, 2015
  9. 藤沼康樹 : 母乳育児支援スタンダード第2版(書評), 週刊医学界新聞, 第3150号 , 2015年11月16日

 

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晴れました

専門職連携教育~亥鼻キャンパスで学んだこと

 千葉大学専門職連携教育研究センター(IPERC)で週一日教育と研究の時間を持つようになって、1年経ちました。たいへん得難い経験をさせていただいており、感謝の極みです。

 さて、専門職連携或は多職種連携とかいま医療者教育界のトピックになっていますが、いろいろ見聞きした範囲では、どうも仲良くやりましょう的な感じの企画が多い印象あります。

 専門職連携って、チーム内での対立や葛藤を、まあまあと水にながすのではないやり方で見つめることなんで、みんなで笑顔で話し合えばOKってことではないんだけどなあと思います。違う専門トレーニングをうけて、職種ごとに違う価値観をもった個人が、クライアントを中心にものを考えるときにはぜったい対立や葛藤が発生するのです。それは、明らかな対立だけでなく、隠れておりみんなが気づかない対立だったり、葛藤だったりします。で、それをなかったコトにできるのは、職種間の権威勾配が固く存在している場合ですね。たとえば、医者が一番エライとか、結局責任をとるのは医者ではないかという価値観がすべてを水に流してしまうような状況の場合ですね。

 で、現代ではこの既存の職種間の権威勾配自体が、たとえば高齢者ケアとか、医療安全とかにフィットしなくなっているってことなのですね。ニコニコとみんなが明るくわらっているWSとかカンファレンスの場合、よく観察してみると、権威勾配が確保されて、「人間的にはみな平等」みたいな価値が共有されているにすぎない場合が多いような気がします。

 権威勾配の最上位にいて、すべての医療の責任を理論的には取る立場にるような医師像を、最近は「孤高の医師=Lone Physician」っていいます。そして真正の専門職連携ができる医者をCollaborative Alternative Physicianっていうようです。協働的オルタナ医師。

 そして、協働的オルタナ医師が、特に今現在必要なのは、医療安全が厳しく問われるようなハイリスクでハイテックな病院の医療現場と、地域包括ケアにおける医療現場だろうと考えています。

 千葉大学の医薬看で継続的に実施している「亥鼻IPE」のカリキュラムはその辺りをかなり意識していると思いますし、むしろ医療現場の様々なチームにも適用可能なプログラムだと思っています。

亥鼻IPEの紹介です👇

www.iperc.jp

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書評:「独立処方と補助処方~英国で広がる医療専門職の役割」

 土橋朗、倉田香織訳「独立処方と補助処方~英国で広がる医療専門職の役割」(薬事日報)を読ませていただきました。

 日本は高齢社会に突入し、病院から地域へ、キュアからQOLの維持・向上へ、単一急性疾患モデルからMultimorbidity(多疾患併存)へといった医療やヘルスケアのパラダイムが確実に変わりつつあるなかで、医療専門職の役割もそれに応じた変化を要請されているといっていいでしょう。

 これまでの病院、キュア、急性疾患のパラダイムなかで、医師はすべての権限と責任を担う役割があり、例えば薬剤の処方は、現在でも医師が独占的におこなう業務となっています。しかし、上述のパラダイム・シフトの中では、医師を中心としたチームから各医療専門職が真に協働(Interprofessional work:IPW)するチームが求められるようなり、様々な権限の移譲や役割のオーバーラップも現実的な課題として浮かび上がってくるだろう。

 この本には、一足先にそうしたInterprofessional workの推進の中で、医師以外の職種(薬剤師や看護師)による独立した処方を進めてきた英国の動きを詳細に記述されています。読み進めるうちに、英国ではこの問題が技術的、倫理的、法的に極めて慎重に検討され、しかも医師以外の処方による効果が科学的に研究され、それを元に継続的な質改善に取り組んでいることが理解できました。

 また、処方とは、「生物学的異常を是正するために化学物質による介入を行うこと」であるという以外に、「ケアの継続性を確保するため」「なに何かを与えなければならないと思う深層意識のため」等心理社会的な考察が十二分に記述されており、医師が読んでも処方の本質について多くの気づきがを得ることができます。
 これから日本で必要とされる専門職協働の本質は何か、そして何が検討され、実践されなければならないのかといったことに関して、処方という切り口で多くの学びをこの本から得ることができると思います。そういった視点から、薬剤師、看護師以外にも、医師を始めとしたすべての医療人に一読をすすめたいです。

 

 (なお、このエントリーは雑誌「薬局」に投稿した記事に加筆訂正したものです)

 

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