複雑困難事例により地域力は上昇する

 複雑困難事例は、しばしば問題解決が困難で、予想外の要因が途中で絡まりながら。見守るしかないという帰結になる場合があります。かかわったさまざまな職種の人たちは、ある意味敗北感や無力感に陥ることもあります。しかし、スタッフで、時には対象となるクライアントや家族を含めて、対話し、議論し、計画を立て、実行し、振り返り、そしてまた同じサイクルを繰り返すことは、チーム力を確実に上昇させます。そして、チーム力が上がったということは、イコール地域の力が上がったことと同意です。ここが、地域医療の広がりの重要な要素で、施設の枠にとどまらない影響を生じます。

 また複雑困難事例に対応する医療者は、同時に複雑度の低い、予後良好で、よくコミュニケーションがとれて、ケアしていて逆にこちらがいわば「癒される」ような患者層を同時に診ている状況をつくることが必要です。それにより困難な事例に対応できるのです。すべての仕事の時間が困難事例で占められてしまうようでは、むしろチームの継続性がむずかしくなるでしょう。

 有り体に言えば、軽い患者さんをたくさん診て、比較的少ない数の複雑困難な事例に取り組むという状況は、地域のprimary careの場にあります。あるいはそれを家庭医診療所と言い換えてもいいと思います。だから、大学病院のジェネラリスト部門の外来がcomplex casesが主体とするならば、複雑度の低い軽い患者さんをたくさんみる場をどこかに確保すべきなのです。

 

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