事務所のヴィジョンとミッションを書いてみる

 なんとなく事務所もそれなりに実体がでてきているので、そろそろヴィジョン&ミッション&行動計画書を作る必要がでてきたが、なかなか難しい・・・妄想も含めて、草稿としてつらつら書いてみよう。これが全部実現できるとはおもってないけれど・・・

 藤沼康樹事務所(仮)のヴィジョンとミッションと行動計画

 家庭医、家庭医療、家庭医療学は、これまでの私の医師人生のキーワードを構成しています。家庭医療(Family Medicine / General Practice)は、特定の個人、家族、地域に継続的に、全ての健康問題にかかわる医療形態であり、「長くそこにいて、すべてにかかわること」がプリンシプルです。

 また、家庭医は、異なる人生に出会う仕事であり、様々な人生のプロセスにある患者さんの手助けができるが故に、身体、心理、家族、社会、倫理など多次元にわたる問題に取り組むことがもとめられ、多職種*1との有機的な連携が必須な、領域横断的な仕事であるともいえます。
 日本は超高齢社会を迎え、絶対死亡数も今後20年で60万人増加すると推計されています。元気な高齢者も増えますが、End of life careもまた日常的にそこかしこに存在するようになります。そうした高齢者を適切にケアするためには、地域指向性の多職種によるチームが地域に多く必要になります。そういう点で、以前から多職種連携に関しては大変関心を持ってきました。
 また、家庭医療学は質が高く、妥当性があり、費用対効果にすぐれたプライマリケアを公平に地域住民が享受するための研究分野です。家庭医療学の研究対象は日常病、患者の病い体験、医師の行動、ヘルスケアシステム、医療者教育、環境など多岐にわたり、研究方法論も、生物医学的研究、疫学的研究はもとより、人文社会科学的方法論も含まれており、実は対象や方法が看護研究とオーバーラップするところも多く、私は看護研究には非常に興味をもって接してきました。
 上述した文脈の中で、私自身の30年の地域医療実践と教育実践をより多くの職種の医療人や医療系学生と共有し、多くの地域に貢献できる人材を育てることに第二の職業人生の時間を使いたいと思います。具体的に開発普及を構想している教育実践プログラムを以下に列挙します。


1.IPE/IPWにおけるリーダーシップを涵養するプログラムの開発
 IPE/IPWは、医療保健福祉にかかわる各種組織や施設のリーダーの意識改革が必要ですが、そうしたリーダー向けのプログラムの開発を行います。これまでの私の30年にわたる医療人としての経験を活かしやすい領域と考えています。


2.都市部プライマリ・ケア現場に特徴的な問題に対応する多職種チーム支援プログラムの開発
 高齢社会の困難の本質は、高齢化率の問題ではなく、都市部における高齢者人口の爆発的増加にあると言われています。特にケアの分断、不要なあるいは不適切な救急受診や入院につながる事例、そしていわゆる複雑困難事例などの問題に直面する頻度が高くなります。こうした都市部特有な問題に対するIPWを円滑にするためのツール開発(tools for shared patient-centered problem solving)を行います。


3.診療所或いは中小病院外来におけるパネル・マネージメントとIPE/IPWの実践コンサルティング
 プライマリ・ケアは基本的に地域でかかりつけとなっている人口集団(パネル)を対象とします。このパネルはその必要とするケアの性質によりレイヤー化が可能で、レイヤー毎に適切な担当職種がある。例えば、比較的合併症の少ない安定した慢性疾患の患者のパネルは訓練された看護師がもっとも有効にマネージメントできる。パネル・マネージメントは多職種連携で行うためIPWの典型といえるが、このモデルケースを構築します。


4.多領域の研究リテラシーを身につけるプログラムの開発
 多職種コミュニケーションにおいては、各職種における専門用語、パースペクティブ、価値観などの理解が必要ですが、それらを促進するために様々な領域の研究論文を理解するセミナーあるいは学習会を行います。例えば、質的看護研究を一つとりあげて、医学部生、薬学部生、看護学部生がそれを元にディスカッションします。また、リアルなケースをとりあげて、そこからリサーチクエスチョンを多職種で設定し、共同研究のあり方を探るようなワークショップも有用と考えています。


5.医療人の生涯教育(Continuing Professional Development: CPD)とIPE/IPWのコラボレーションの推進
 従来医療人の生涯教育は、自身の専門領域の知識と技術のアップデートを意味してきましたが、知識と技術のアップデートだけで良いパフォーマンスが保証されるわけではないことが明らかになってきています。よいパフォーマンスは、自身の所属している組織や施設の質改善、コミュニケーションやリーダーシップといった一般能力、そして資質の涵養などが複合的に作用して保証されます。これらを含む生涯学習をCPDと呼ぶようになっていますが、おそらくIPE/IPWはこのCPDと直結していると考えられます。これらの関連性を探索的に研究し、日本の医療人に有用なCPDのあり方を提示したいと考えています。

 

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#rose

*1:専門職、非専門職を含めますので多職種という言葉はTransprofessionalの意味でここでは使います