今年1月から、あたらしい仕事として、大学院看護学研究科で月2回のJournal Clubを運営することになりました。
だいたい抄読会っていうのは、医者生活の中では、数限りなく「始めて数ヶ月で消滅」を繰り返してきたわけで、あまりよい印象がありません。まあ、続かないのです。そして、その後Evidence basedの2次資料=データーベースができてきたので、臨床上の疑問をとくためにもとの文献にあたるっていうハビットがなくなって、データーベースをあたるということになってきていますのでますます原著論文を読むって行為が遠いものになってきました。
ただ、Annals of Family Medicineではオンライン上であたらしいJournal Clubの提案がされていて、非常に興味をもっていました。名づけてRADICALJournal Club。RADICALとは、以下の頭文字をとっています(文献1)
- Read the article critically 論文を批判的に読む
- Ask the key questions for yourself 自分自身にとってキーとなるクエスチョンは何かを問うてみる
- Discuss the meaning and shared interpretation その論文の意味を検討し、その解釈をシェアする
- Inquire into other sources of knowledge and insight. 知識や洞察について他の情報源にあたってみる
- Collaborate with others who know or care about the issues. 当該の問題について知っていたり、ケアの経験がある他者と共同で学んでみる
- Act by sharing a TRACK posting and working to change practice, policy, training, or research. TRACK(AnnalsのWeb上の投稿欄)に投稿しシェアし、診療、政策、教育、研究にチェンジをもたすために作業してみる
- Learn from what others share on TRACK and from your actions and collaborations and restart the cycle. 他の人の投稿から、自分自身の行動と協働から学び、学習サイクルを再度まわす
そうとうハードルが高いように見えますが、様々な知的能力が鍛えられそうな学習サイクルです。
ちなみにJournal Clubの効果についてはSystematic reviewが存在します(文献2)。それによると、Journal ClubのBest Practiceの構成要素は、
- The use of a structured review checklist
- Explicit written learning objectives
- Formalized meeting structure and process
の3点を満たすべし、となっています。
自分的には、
1.批判的吟味のための構造化されたチェックリストを使用する。
2.読む論文についてディスカッションのポイントを自分なりに整理して提示する
3.決まった時間帯に確実に場をひらいておく
が重要と考えています。
第一回のJournal Clubは、Grounded theoryをつかった論文を質的研究のチェックリストにそって紹介し、提示したディスカッションポイントにそって、議論をファシリテートしましたが、なかなかおもしろい内容になりました。チェックリストはネット上に公開されたもの(http://jnapcdc.com/cq/check-sheet.html)を使用しています。なかなか有用です。
文献1:Stange KC, Miller WL, McLellan LA, et al. Annals journal club: it’s time to get RADICAL. Ann Fam Med. 4:196–197,2006.
文献2:Lee, Andrew G., et al. Using the Journal Club to teach and assess competence in practice-based learning and improvement: a literature review and recommendation for implementation. Survey of ophthalmology 50.6 : 542-548,2005.