2021年1月1日~16日までの私的パール集をまとめました。
プライマリ・ケア私的パール」シリーズは科学的根拠や研究的根拠があるわけではなく、一般化可能性は低いです。これらはあくまで長い職業経験・臨床経験の省察に基づくTheory in Practice(実践の理論)です。つまり、ローカルで私的なコンテキストに基づいています。ただ、こうしたTheory in Practiceがある種の暗黙知としてナレッジベース化され、他の医療従事者のそれと接続することでMindlineを形成する可能性があると考えています。
- 20歳以上年齢が離れた夫婦の場合、子育てと介護が同時に課題になっている可能性を考える
- 他院で骨粗鬆症であちこち痛いのだと説明されている高齢者の中で、治癒可能な低リン血症性骨軟化症が存在する場合があるので、PとALPは一度は測定しておきたい
- こどもの伝染性膿痂疹では、びらん面がほとんどない紅斑や赤色丘疹のみの場合がある
- よい住居環境で育ち、しもやけ、ひび・あかぎれの経験がない若い医師は、凍瘡をSnap Diagnosisすることが難しい
- 皮膚を常時ボリボリと掻く高齢者、特に在宅患者で臥床して「うとうと」していても、腹のあたりをひっきりなしに掻いている場合は疥癬を考える
- 臥床がちで不活発な高齢者の類天疱瘡では物理的な擦過がすくないためか、水疱があまり目立たたず、軽いかゆみのある淡い紅斑だけのことがある
- エチゾラムを毎食後定期で服用する処方は、たいていDifficult patientに対応しきれない身体科の医師によるものである
- 高齢者の場合、全く症状がなくても2年に一度は腹部の触診を実施すると、無症状の腫瘤やAAAが見つかる場合がある
- 夫と妻各々の生活機能が一人暮らしできるかどうか境界線上であっても、二人だと案外助け合ってうまく生活できる場合が多く、老老世帯は夫婦を一つのユニットとしてみて機能評価し、支援ポイントを探すのがよい
- プライマリ・ケア外来で診断エラーが最も生じやすい症状は腹痛である
- がんの治療歴のある患者では、がんは「既往歴」ではなく、cancer survivorという継続的でactiveな問題としてリストアップしておく
- 目の前の高齢患者は、はじめから高齢者なのではなく、こども時代があり、青春時代があり、出会いと別れがあり、誇りがあり、愛情や悲しみを経験してきたライフヒストリーがある
- 下降期慢性疾患や終末期において患者の自己/主体の一貫性を保証するものは日常ルーチンであり、日常ルーチンの下支えがケア構築の際のキーとなる
- 各科専門医から家庭医に転身した場合、得意点強化型の生涯学習スタイルではなく、弱点補強型に切り替える必要があるがその際はアンラーニングに伴う不安が生じる