プライマリ・ケア 私的パール集 第1弾

 あけましておめでとうございます

 Twitterフォロワー数4000名超え記念で、断続的に連投Tweetした「プライマリ・ケア私的パール」シリーズは科学的根拠や研究的根拠があるわけではなく、一般化可能性は低いものです。これらはあくまで長い職業経験・臨床経験の省察に基づくTheory in Practice(実践の理論)です。つまり、ローカルで私的なコンテキストに基づいています。ただ、こうしたTheory in Practiceがある種の暗黙知としてナレッジベース化され、他の医療従事者のそれと接続することで、暗黙知のネットワークとも表現されうるだろうところのMindlineを形成する可能性があると考えています。

 2020年末までのTweetをここにまとめておくことも意味があるだろうと思います。「プライマリ・ケア私的パール」シリーズは2021年も引き続き断続的に続けていくと思います。Twitterにアクセスしていない方にも共有できるように、一定の数が蓄積されたら、こちらのBlogにもまとめてアップしていきます。

 では、これまでのTweetを以下にならべてみます

  • 口腔内違和感、舌が荒れる、口腔内乾燥感といった症状の原因としての「舌磨き」は案外多い

 

  • 高齢者が不眠を訴える場合、寝床に入る時刻をきくと、7時とか8時と答える場合が結構多い。理由きくと、TVも面白くないし、やることがないのでとのこと。夜間尿で12時前にはおきてしまうので、よけい焦燥感が高まってしまう

 

  • 漫然と被覆材が使われている難治性の皮膚潰瘍が、時に皮膚がん(特に有棘細胞がん)のことがある

 

  • 車椅子で通院している患者の下肢閉塞性動脈硬化症は、症状出現以前に指摘されることは少なく、下肢の重症虚血症状が生じて初めて診断されることが多いが、虚血症状のはじまりが趾間びらんのことがあり当初白癬として治療されている場合がある

 

  • 血圧と血糖に関しては、正常値を超えた「とたんに」なにか大変なことが生じると信じている患者は驚くほど多い

 

  • ある患者をずっと同じ医者が継続的に見ている場合、検査や所見、症状の変化を医者が無意識に「良い方」に解釈してしまうことがあり、これを「だいじょうぶマイフレンド・バイアス」と呼ぶ

 

  • COPDなどによる慢性呼吸不全で通院されていて、HOT実施中の方で、夕方以降に呼吸困難感が強くなる方の場合、胸壁に湿布を数枚貼ると楽になる場合がある

 

  • デイサービスで易怒性がめだつ高齢の認知症男性の場合、なんらかの疼痛(筋骨格系、泌尿器科系等由来のことが多い)を自覚している場合がある

 

  • インスリン自己注射が、「自分はちゃんと打てている」という自信を生み、自己効力感の源になっている場合がたまにある

 

  • 禁煙を決断できない理由に、「これからがまんしつづける人生がはじまるのか」という恐怖心があるので、「かならずタバコがアタマに浮かばなくようになります」と伝えることが大事

 

  • ほぼ自宅内でのみ生活している後期高齢者が、1-2日の経過で「すわっていると傾いてしまう」「立とうとするとへなへなしてしまう」麻痺ははっきりしない、という場合には発熱、硬膜下血腫も考える

 

  • ほとんど医者にかかったことのない中年以降の男性が軽い腹部症状を訴えて初診で来院した場合、腹部悪性腫瘍を疑う

 

  • 在宅ケア対象の高齢者の慢性心不全においては、労作時息切れにおける「労作」に乏しいため、悪化の早期発見には体重のこまめな測定がもっとも有用である

 

  • 高齢者が頭痛を主訴に来院した場合、頭痛の表現が「お釜をかぶったような重苦しさ」であればうつ病を疑う

 

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